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気になる症状 すっきり診断

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気になる症状 すっきり診断 2024.05.21

子どもの口腔機能発達不全症

小児歯科 准教授|山田亜矢

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生活見直し よくかんで

 子どもの食事に関する困り事として、幼児の保護者の約3、4割が「食べるのに時間がかかる」と回答しています。食べるのに時間がかかる子どもは他にも「よくかまない」「早食い」「軟らかいものを好んで食べる」といった問題を抱えていることが多いです。

 食事に関する問題が生じる原因の一つとして「口腔(こうくう)機能発達不全症」があります。これは、食べる、話すといった口の機能が十分に発達していない状態です。つまり、口の周りや舌を動かす筋肉が十分に発達していないために、「食べる」機能をうまく発揮できていないのです。

筋肉使わず衰え

 乳幼児期に離乳を進めていく中で、食べたり飲み込んだりする機能をうまく獲得できなかったり、歯が生える時期の遅れや、虫歯やけがなどによって歯を失ったままにしておくこと、指しゃぶり、口呼吸、安静時の舌の位置が低位、舌の裏のひだの付着位置異常などが誘因になることもあります。

 口の周りや舌を動かす筋肉は手足や全身の筋肉と同様に、使って鍛えていなければ発達できないだけでなく衰えていきます。すなわち、軟らかいものばかり食べたり、よくかんだりしないと、さらに筋力は低下していきます。

 また、口腔機能発達不全症の子どもたちは、口腔の内側と外側の力のバランスが悪いために、歯並びやかみ合わせの問題、顔のゆがみなどを引き起こすことがあります。

 今の子どもたちは昔の子どもと比べて、口を使った遊びや会話が減っています。子どもたちを観察していると、スマートフォンやゲーム機を使用して遊んでいるのをよく見掛けます。スマホやゲーム機を使用している時の姿勢は、身体だけでなく口腔機能に関連する筋肉にも悪い影響を与えています。

健全な成長妨げ

 口腔機能発達不全症は「食べるのに時間がかかる」だけでなく、実は子どもたちが健康に成長発達していく事を妨げる要因になっているのです。

 よくかんで食べることで、口腔機能を高めるだけでなく、脳神経の活性化や唾液分泌の増加、口臭や虫歯、歯肉炎の予防、肥満防止にもつながります。残念なことに、口腔機能は老化に伴い低下していきます。子どもだけでなく家族みんなで口腔機能について考えて、生活習慣や口腔機能に悪影響を及ぼす癖、食事の取り方、歯科治療や口腔管理などを見直してみましょう。

 子どもの食べ方、歯並び、かみ合わせ、話し方など、気になることがありましたら、一度、歯科医院を受診して口腔機能の発達状況の診査を受けることをお勧めします。

河北新報掲載:2020年10月9日

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山田 亜矢(やまだ あや)

長崎県出身。1995年長崎大学歯学部卒業。1997年長崎大学歯学部小児歯科学講座助手、2005年九州大学小児口腔医学分野助教、2008年東北大学小児発達歯科学分野助教、2012年より同准教授。専門は小児歯科学。

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